ジェルトロン開発者・田中啓介のブログです。

2019年3月22日金曜日

商人である前に人間として必要なこと

日々商いをするにあたり、私が常に心にとどめている教えがある。それは常軌を逸した価格で物が売買された戦後の復興期に商道徳の大切さを全国行脚して伝え続けた「商業界」主幹の倉本長治が示した商売十訓である。私自身、商業界を通じ倉本長治の長男の倉本初夫二代目主幹には約30年間お世話になった。今回はこの教えについて私なりの解釈でお伝えしたい。その教えの基本となるのが「店は客のためにある」という言葉である。この意味は、店(会社)は経営者のものではなく、また儲けるためだけの場所でもない。店はお客さんに喜んでいただくという役割を実践する場であり、その喜びを自分自身の喜びとして受け止め、幸せな商人という人生を歩む真の目的が店にあるということだと解釈している。
「商売十訓」
一、 損得より先きに善悪を考えよう
  • 目先の売り上げや儲けを優先的に考えるのではなく、人として正しい行為なのかを判断の基本とすることが大切であるということ。詩人である相田みつをも「損か得か、人間の物差し。嘘かまことか、神様の物差し」と言っている。金儲けがどんなに上手くても商売人として幸せな人生が歩めるということではない。
二、 創意を尊びつつ良い事は真似ろ
  • 単なる人の物まねではなく創造者の目指した目的を理解し、尊敬の念をもって真似ることが大切であるということ。弘法大師も「先人の跡を求めず、求めたるところを求めよ」という言葉を残している。
三、 お客に有利な商いを毎日続けよ
  • 商品の価格もサービスも全てにおいてお客さんに喜んでいただくということを最優先に考えようということ。
四、 愛と真実で適正利潤を確保せよ
  • 商品の価格や儲けを決めるにあたり、お客さんを大切にするという純粋な愛の尺度を基本とし、儲けすぎないよう、損しないようバランスを保ち、「足るを知る」という謙虚さと感謝の気持ちを忘れてはならないということ。
五、 欠損は社会の為にも不善と悟れ
  • 商売をしていて赤字を出すようでは納税の義務が果たせていないということになる。そして赤字では商売が継続できなくなり、結果的にお客さんに迷惑を掛けるということになるということ。
六、 お互いに知恵と力を合せて働け
  • 自分の店だけを考えるのではなく業界の発展という広い視野を持って、様々な人との交流を進める中でより良い商品やサービスを創り出すことが大切ということ。
七、 店の発展を社会の幸福と信ぜよ
  • 愛と真実をもって商いをしているならば、迷いなく自分自身の店の発展は社会貢献に直接つながっている、という自信を持って商いを行ことが大切であるということ。
八、 公正で公平な社会的活動を行え
  • 誰に対しても差別をすることなく常に感謝の気持ちを大切にし、孔子が人生で一番大切なこととして示した「恕」という思いやりの心でお客さんに接することが大切ということ。
九、 文化のために経営を合理化せよ
  • 日々の経営に於いてより良い方法を導き出すことができれば、自ずとお客さんの生活様式にも変化をもたらすことになり、そこに新しい文化が育まれる。商売人は文化の創造者にもなれる尊い仕事であるということ。
十、 正しく生きる商人に誇りを持て
  • 自分の生き様が商人である前に人として正しく生きているという自負があるなら、その生き方に誇りを持つべきであるということ。
私はこれからもこの教えを礎として商人としての人生を歩み続けたいと思う。



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