ジェルトロン開発者・田中啓介のブログです。

2012年5月31日木曜日

目的と目標(その3 原子力発電)

今日、大飯原発の再稼動が現実的になった。

日本人の多くが福島原発の事故が起こってはじめて放射性物質による人体への危険な影響を真剣に考えるようになったわけだが、事故が起きる前から心ある人々は原発を「トイレの無いマンション」という表現でその危険性を重要視してきていた。原発に於いて使い終わったウラン(プルトニウム)の処置がしっかりとできていないまま今日に至っているということである。そのうち処理できるようになるだろうといった安易で人任せな取り組みが40年もの期間続けられてきているのである。現在の福島第四にはとんでもない量のプルトニウムが壊れた建屋のプールに眠っている。このプールが壊れてしまうと太平洋に汚染水が流出し数ヶ月でアメリカにまで流れて行く。原発事故による一次的な放射性物質の影響だけでなく、このように廃棄物という点を捉えてみても環境に優しい物ではないことは明らかである。

さらに環境について、もう一つの視点を提案する内容の記事が5月11日の舞鶴市民新聞に掲載された。これは京大舞鶴水産実験所の益田准教授の調査報告書である。それによると、北緯35度にある高浜原発の停止前と停止後ではその付近に生息する魚貝類の数に大きな変化があったというものである。稼動中は分布中心緯度が18度から24度までの南方系の魚貝類が生息していたが停止後はそれらは全て死滅していなくなっている。その代わりに34度から38度までの魚貝類が約2倍に増えているというのである。ようするに本来の生態系に戻りつつあるということになる。

なぜ南方系の魚貝類が増えたかというと、その理由は高浜原発の温排水量は1~4号機を合わせて毎秒230立方メートルもあり、その結果付近の水温が2度上昇しているというものである。ちなみに一級河川である由良川の年平均流量が毎秒42立方メートルであるから、230立方メートルというのはなんとその約5倍以上の水量に当たるわけである。この比較をすると生態系が大きく変わることにうなずける。益田准教授は「原発事故の直接的な影響だけでなく、温排水が恒常的に自然に与える局所的温暖化の影響も原発を考える判断材料にしてほしい」と訴えている。

何のために原発があるのか?その目的は?と考えると福島の事故後やっと今まで表に見えてなかったものがあぶり出されて見えるようになったと私は受け止めており、その実態の多くは原子力事業に関わる様々な人間の金銭という尺度に基づく経済活動優先の社会構築であるということである。

本当に正しい視点に立ったエネルギー開発とは何か?まず自分自身が宇宙の中の地球という星の構成要素の一つであるという考えをもつことであり、自分という構成要素は自ずと地球環境であるということである(この発想については私の著書をご一読いただきたい)。一人でも多くの人がこの考えを大前提として、エネルギー開発を再考する大きなチャンスが今おとずれていると考えていただければ、金儲けという目先の利益確保という誤った目標に縛られることなく、真に重要な幸せな暮らしを創造するという目的達成のためのエネルギー開発が実現できると確信している。

最後に、福井県は世界の中でも最も多くの原発が集中的に存在している場所であることはご承知のことと思うが、そのことは同時に福島の規模の地震や津波が高浜や大飯に発生する危険性よりも北朝鮮などの国との有事の際にはミサイルによって高浜や大飯が標的にされるということを心しておかねばならないということであると考えている。ちなみに私の住まいは高浜原発から15km圏内にある。
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