ジェルトロン開発者・田中啓介のブログです。

2016年6月3日金曜日

地獄と極楽

あるお金持ちが「世界中のいろんなところに行ったので、何かとんでもなく楽しい体験を企画して欲しいのだが」 と、旅行会社に依頼しました。
「では『地獄と極楽ツアー』はいかがでしょうか?」「面白そうだね!参加しよう」
 ということで、お金持ちは興味本位で参加してみたそうです。そして、当日指定された場所に行くとタイムカプセルのようなものがあり、その中に入って目を瞑りしばらくすると係員に「はい、目を開けて。地獄に到着です。窓から覗いてみてください」と言われ、下を覗くと、大きなテーブルに20人近く座らされており、すごく豪華な料理が並べられていました。しかし、よく見ると20人みんな椅子に左手が縛られていて、右手に1m以上の長いお箸を持たされています。どう考えても、お箸が長すぎて口に料理が辿りつかないのです。
 どうなるのかな、と思っていると「どうぞ食事を始めてください」と、どこからともなく声が聞こえてきました。普段のお箸使いでは到底食べられないものですから、おかずを突っついて放り投げて食べようとする人がいました。すると、向こうの人に飛んでいってしまい「何をするんだ」と喧嘩になり、結局1時間の食事の間、誰も何も食べないで終わってしまいました。
「なるほど、凄い修羅場でまさに地獄絵図を見ているようだ。」「では、次は極楽にご案内します。また目を瞑ってください。……はい、到着です。覗いてください」
「おいおい、詐欺かい?さっきと同じ景色じゃないか。大きなテーブルに20人近く座らされていて、左手が縛られて、1m以上の長い箸を持たされている。どこが極楽なんだい」
「まあ、見ていてください」
 先ほどと同じように「どうぞ食事を始めてください」と声がすると、お料理をぱっとつまみ、2つ隣の人に「はい」と食べさせてあげているのです。そして「そのかわり、僕はこれね」と言うと、今度は向こうの人が食べさせてくれるのです。そして、無事1時間で全員が満腹になり「ああ美味しかった。良かったね」と言って、終わるのでした。
「あれ?与えられている状況は一緒なのに、やり方を変えて人にちょっとお手伝いをしただけで、皆がお腹一杯になった。なるほど、これは極楽だね」 
 要するに、我々が生きている世界を地獄にするのも極楽にするのも、考え方と行動次第だということです。
 皆が1m以上のお箸をもって「自分が、自分が」と行動するから、社会のリズムがうまく回らないのです。そうではなく「まずは人を喜ばせよう」とすると、自分の順番が回ってきたときに、お腹一杯に美味しい食事をいただくことができるでしょう。「まず人を喜ばせて、その人の喜びを自分の喜びとする」という利他の考え方を実践することで、自然と社会は良くなっていくはずです。

 地球は、そこに暮らす人間の利己を競い合う場ではありません。お互いが助け合い、幸せになるための場だと思うのです。
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