ジェルトロン開発者・田中啓介のブログです。

2019年12月20日金曜日

舞鶴市民より世界の人々が注視する舞鶴

来年から本格的に始まる「パリ協定」を前に小泉進次郎環境相が参加した地球温暖化対策を議論する会議のCOP25で、日本が「化石賞」なるものを受賞したことが話題となっている。「化石賞」(Fossil Award)とは、COPや国連気候変動交渉会議の会期中、温暖化対策に対して積極的でない国に対して皮肉を込めて授与される賞である。この会期中会場周辺では日本に対する抗議デモが行われた。抗議の内容は「化石そのものである石炭を使う火力発電を中止せよ!」という強いメッセージである。要するに世界中の地球温暖化を心配する人々から日本はかなり危険な国として捉えられているということである。

そんな中、石炭火力発電所を有する舞鶴市が誘致活動を進め土地の用途変更も行い、日本最大規模のパーム油火力発電所を舞鶴に建設するという。日本最大ということは世界でも最大規模となり、ここで消費されるパーム油を生産するためにインドネシアやマレーシアでは自然破壊が加速している。試算によると舞鶴のパーム油火力発電所でのパーム油の年間使用量を賄うには舞鶴市の総面積の80%強のアブラヤシ農園が必要になるということである。同時に子どもたちが労働者として働かされているという現状もある。さらにパーム油はSDGsの概念に準じた継続供給が可能な燃料とはいえないという現状を危惧し(公財)世界自然保護基金ジャパンが舞鶴市などに発電所事業計画の見直し等を求める要望書を提出している。

福知山市でも大きな問題となっているパーム油火力発電所の40倍の規模ということは、西舞鶴の街中に臭気と振動音の発生を心配しなければならないと考えるのが妥当であると思う。特に一年のうちで最も多く北北東の風が吹く舞鶴であるから、風下に位置する福井小学校への影響は計り知れないのである。

私はバイオマス発電というのは里山の間伐材や廃棄用の木材を燃料として活用する火力発電だと理解しているので、新たに自然林を伐採開墾してパーム油の原料となるアブラヤシを栽培するということは本来のバイオマスという概念から外れていると思うのである。

「石炭火力発電とパーム油火力発電のまち舞鶴!すぐ隣には高浜原発もございます」というPRをしたらまず舞鶴には住みたくないと世界中の人々は思うだろう。特に地球温暖化阻止と自然環境保護を考える人々にとって舞鶴は環境破壊推進のまちとして記憶されることになると思う。そして悪化の一途をたどる医療と教育環境を重ねてみると舞鶴市の人口が8万人を割り込んだという事実から「住んでよし」の舞鶴ではないことをもっと大きな問題として真摯に捉えなければならないと思う。

先日の市議会で「パーム油火力発電所 建設反対の幟を立てて住民の不安を煽っている者がいる」さらに「市の策定した計画には協力すべし」という発言をした議員がいるがこれは大きな間違いで、私は先日開催された喜多自治区の集会に参加し住民の総意によって幟が立てられていることを確認した。市議会議員はもっと現地に足を運び地元住民の皆さんとしっかりとしたコミュニケーションをもっていただきたい。住民に相談なく策定した建設計画の実行ありきではなく、純粋に地元の人々の少数の意見に耳を傾けなければ正に「ドクターTのひとりごと」に記された市長の姿勢が議会運営そのものとなっていると考えてしまうのは私だけであろうか。

世界中から注視されている今こそ売電ビジネスを是としたお金の尺度を最優先にするのではなく、住人の命と道徳心を基本としたまちづくりを世界に示す好機であると捉え、子供や孫達に素晴らしいまち舞鶴を残さなければならないと思っている。

今回でこの連載も50回という節目となった。今まで以上に気持ちを新たにしっかりと歩を進めたいと思う。幕末の国学者である平田篤胤が「正しきによりて滅ぶる国あれば滅びても良し 断じて滅びず」という言葉を残している。結果を心配することよりも、正しいと思うことを貫いて生きれば必ず良い結果がついてくる、という信念をもって生きる大切さを伝えた言葉だと私は解釈している。正しさの基準は様々であると思うが、「人の幸せを自分の幸せと考える」という生き方には正しさの基準の王道があると思うのである。私自身、日々自戒の念をもって少しでも「正しき」が実践できるよう努力を重ねたい。