ジェルトロン開発者・田中啓介のブログです。

2013年10月31日木曜日

目的と目標(その7 商品表示)

 ここ数日、毎日のようにホテルのメニュー表示の偽装であろう問題がニュースになっている。これらの行為の根本は売上を上げるために行ったものであると思う。本来、商品表示とはお客様が商品を購入する時の判断の基準となるべき情報であるから、正直な情報でなければならない。お客様という主人公が商品を購入するための情報であり、売り手が主人公になって売るための情報を表示したところに根本的な間違いがあると思う。

 私は今から6~7年前に起こった食品の偽装表示が大きな社会問題になったことを忘れることが出来ない。有名料亭や牛肉の産地といった所謂ブランドのもつ力を使い、真実とは異なるものを提供していたわけである。

 ちょうどこの頃、弊社にとっても偽装表示に類する大事件が発生した。弊社の類似マットレスを販売していた日本を代表するベッドメーカーが、その類似商品の販売のための説明用のPOPや資料に弊社商品の写真と説明文をそのまま弊社のカタログなどから抜き取り使用していたのである。

 このPOP等を見て類似品を購入されたお客様は全国に約2万人はいらっしゃるのではないかと推測している。当然のこと、購入されたマットレスの中身はPOP等の説明書とは異なるものが使用されている。この行為は日本を代表するメーカーブランドを信じておられるお客様にとって大きな裏切りを行ったことになる。


 私は早速そのベッドメーカーに現状調査を申し入れた。数日後、「調査の結果、確かにパシフィックウエーブのカタログなどから無断で写真や説明文を使用していたことが判明しました。」との回答が来た。そして後日、弁護士から「30万円払うので無断使用のことは許して欲しい。」との手紙が送られてきた。

 私は「虚偽の表示を信じて購入されたお客様に対して真実を伝えるためにも新聞で現状説明と謝罪をしてくれればいい。」と伝えた。しかし彼らはそれはしないという。そこで真実を伝えるために弊社のホームページでこの事実を公表した。すると彼らから「早急にこの事実公表を中止しないと名誉毀損で訴える。」との手紙が来た。弊社は断固として戦うべく弁護士と契約したのであるが、残念なことにこの弁護士の対応が不十分で数年前に時効になり、弊社とそのベッドメーカーにおける法的な最終結論を導き出すことができなかった。

 またこの間に消費者庁にも出向き相談をしたが「このことが発覚してからそのPOP等を売り場から撤去しているのなら、もう済んだことなので何も対応することは出来ない。」との回答であった。しかし、現在も虚偽の説明を受けて購入し、そのマットレスを使用している人が多く存在しておられるという現実がある。過去の購入者のことは済んだことにしてしまうのはおかしいと思う。日本の法律というのは、このような事例において本当に消費者を保護しようという強い信念が存在していないように感じる。

 現在の私の心境として、弊社の商品の機能を有するマットレスであると信じて類似品を購入された方々にしっかりと真実を伝えることができなかったことが残念でならない。

 このベッドメーカーの目的はホテルと同じく売上を上げることであり、自社の商品ではない写真や説明文を盗用して、真実でない機能を伝えるという行為に対し殆ど罪の意識はないのである。お客様に喜んでいただくことを究極の目的として考えることの出来ない企業が業界をリードしている日本は恥ずかしいことであると思う。

 私の持論として目標は数字で表現できるが目的は心のあり方であるから明確に数字で表現することは不可能なものであると考える。要するにどんなに素晴らしい目的設定が出来たと思っても、それを数字で表現することができるようならばそれは誤りであり、単に目標でしかなく、そこには命を懸けるような仕事は存在しないと思うのである。命懸けで取り組むことの出来る目的を設定することができる仕事にこそ、その目的達成のために必要な目標が正しく設定されるものであると考えるのである。

 消費者庁の担当官が言っていたが、「その類似品を買った実際の購入者から説明の内容と中身が異なるという申し立てがあれば、更なる調査が可能であり、購入金額の返金等もありうるかも知れない。」とのことであった。現在も日本中で多くの方が知らずに類似品を使用されているが、そろそろマットレスの買い替え時期であることから、買い替えのタイミングで廃棄するためにマットレスをナイフで切り裂いて中身を見られた時、購入時の説明の内容と異なっていることに気づく人がおられれば今からでも消費者庁などに訴えていただければと思う。そして消費者庁の指導によって少しでも日本企業の浄化ができれば、お客様を主人公とした正しい商業が育つ土壌ができるとささやかに願っている。